ナウシカの父の憧憬

世の中の疑問に思ったことを綴ったブログです。

森友の真相は解明済みだ

佐川証言を分析すれば森友の真相はほぼ解明済み。だが最も重要な問題はいつも置き去りだ。

 

先日の佐川元国税庁長官の国会証人喚問の結果、マスコミや政治評論家は「結局真相は何か良く分からない」などとコメントしているが、実は佐川氏は重要なことを極めて明確に答弁していた。

証言内容を分析すると結論は明白で、私は森友問題の真相はほぼ解明出来たと考えている。

ただし毎度のことだが本当の問題は今回も置き去りになるだろう。以下その要点を述べてみたい。

 

【佐川氏の証言から張本人がはっきりした】

まず彼の証言で重要な点は以下の4点だ。

①数十回の証言拒否を行った。

安倍総理昭恵夫人、その他政治家の関与はなかった。

③全て官庁内のみで行われたことだった。

④自身の書き換えの関与は証言を拒否した。

 

まず①の点から、佐川氏は後で偽証罪に問われることの無い様、極めて慎重な態度で証言していたことが良く解る。

ところがその様な慎重な答弁を行っている中で、②や③は明確に断言している。これは何を意味しているか言うと、「②や③を断言しても後で偽証罪に問われることは無い」と彼が確信していたからとした考えられない。

例えばもし財務省内で書き換え問題が調査途中であったならば、②や③を断言することはまず有り得ない。調査結果によっては後日偽証罪に問われる危険性が残るからだ。つまり全ての真相が解明出来て初めて②や③の証言が可能になるはずだ。

ということは佐川氏は既に全ての真相を完全に把握しており、だからこそ②や③を断言出来たということになる。

では彼はどうやって事の真相を完全に把握し得たのであろうか。

例えばもし彼の全く感知しないところで文書の書き換えが行われていて、財務省内で内々に調査が行われた結果、②や③の点が記載された詳細な報告が彼のところに上がってきたとしよう。その報告書を見た結果で彼が証言する場合、②や③の様な証言になるかと言えば、そうはならない。

というのは、その報告内容が100%正しいとは限らないからだ。例えば官邸からの指示で書き換えを実行した官僚がいたとして、官邸からこの官僚に対し「官邸から指示があったことは省内でも絶対口外するな」といった口止めが行われていることも考えられる。このことが後々明らかになった場合、佐川氏の証言は偽証罪に問われる可能性が極めて高くなる。

なのでこの場合の彼の証言は、「私のところに上がってきている報告では、政治家の関与は無く、全て省内で実行されたものであったと承知している」という内容になるはずだ。

国税庁長官にまで昇りつめ、極めて慎重な証言をしていた人物が、そんなことにも想定せず不用意に断言的な発言をすることはまず考えられない。

では彼は何故②や③を断言出来たのか。

それは単刀直入に言って、佐川氏自身が書き換えを指示・実行した当事者だからに他ならない。当事者であれば「政治家の関与が無く、全て省内で行われた」ことは自身が最も知っているはずで、また当事者以外では断言することはまず不可能だからだ。

佐川氏は、自身が書き換えに関与したかの質問に対し、証言を拒否している。これは自分のことを聞かれているわけだから自身の関与が無ければ、政治家の関与は無かったと答えたのと同じように「自身も関与していなかった」と答えればそれで良いはずだ。にも拘らずそれを証言出来なかったということは、彼自身が関与していたことの何よりの証拠だ。

つまり結論は、安倍首相や昭恵夫人その他政治家は全く関係なく、佐川氏を首謀者(あるいは複数名が共謀)として財務省内だけで書類の書き換えが行われた、ということだ。

蛇足だが、野党は加計学園問題では柳瀬元首相秘書官の参考人招致を要求しているがこれも大した意味はない。柳瀬氏は愛媛県職員等と面会し「これは首相案件だ」と発言した疑いが掛けられているが、仮にそういう発言があったとしても特に問題はないと考えられる。「首相案件」というのは首相がイニシアチブを取って進めた施策の従来からの通称で、安倍首相は当時文科省の岩盤規制を突き崩そうと新規獣医学部の開設を目指していた。それだけの意味で彼が「首相案件」と発言したことは十分有り得ることで、そのこと自体は何の問題も無い。そもそも加計学園を担いできたのは官邸サイドではなく愛媛県などの自治体サイドであり、彼が何故発言を否定しようとするのか理解し難い。

官僚は都合の悪そうなことは、野党からの理不尽な追求を恐れてか何でも隠そうとする習性があるようだが、どうせなら是非全て正直に話して欲しいものだ。

 

昭恵夫人の何が悪いのか】

以上の点からこれは官僚組織の体質の問題であり、本来政治問題などでは無いと考えるべきであろう。さらに昭恵夫人に関しては、本件に関してはむしろ被害者のように思える。

この件に関して、昭恵夫人が籠池氏に「(払い下げの対象の土地は)良い土地ですので進めてください」と発言したとされ、それが事実かどうかを野党やマスコミは問題にしていた。しかし夫人がその様な発言をしていようがいまいが、道義的責任を含めて夫人には全く責任は無い。

何故なら籠池氏は払い下げに関して何の権限も無い一般民間人であり、「進めてください」と言ったとしても、それはせいぜい「手続きを進めてください」という当たり前のことを言った程度の意味でしか有り得ない。当時二人は理事長と名誉校長の関係であったことを考えると、私はこの様な会話があっても不思議は無いと推測するが、あったとしても全く問題無い普通の会話の類いである。

籠池氏が近畿財務局に訪れ、昭恵夫人との写真を見せて「昭恵夫人も進めてくださいと言っている」と言っても、財務局職員は「それがどうした?」と言えば良いことだ(またそういう態度であることが公務員には当然に義務付けられている)。

にも拘らず官僚が勝手に忖度し不公正な払い下げが行われ、その責任を昭恵夫人が負わされるとすれば、夫人にしてみればたまったものではない。

昭恵夫人は、自身の名前と写真と発言を勝手に利用され、勝手に忖度されただけの被害者に過ぎない。

もしこれで何らか責任を問われることがあるとすれば、彼女の立場にしてみれば、自分のやったことがいつ、誰に、どの様な形で利用され、その責任を問われるか分からないことになる。こうなるともう昭恵夫人は、他の人間と話しをすることも、一歩も外出することさえ出来なくなるであろう。昭恵夫人は身分としては一般人であり、これはもはや人権に関わる問題でしかない。

この様なことを政治利用しようとする野党や、それに乗っかる様な報道をするマスコミや政治評論家の態度には極めて問題を感じる。

 

【結局問題はいつも置き去りのままだ】

では書き換えが行われた理由、動機は何だったのか。

結局財務省内だけで行われていた訳であろうから、誰もが思っている通り官僚による忖度が働いたということでしかないだろう。動機は安倍首相や昭恵夫人に対する点数稼ぎのためで、恐らく払下げ地の不当な値引きも行われたのであろう。

官僚達が勝手にやったことで昭恵夫人に迷惑が掛かるとすれば、安倍首相の不興を買うことは間違いなく、組織のトップであった佐川氏にしてみれば、それだけは何としても避けたいとの意識が働いたであろうことは想像に難くない。

安倍首相にしてみれば知らないうちに勝手に忖度をされただけの、こちらもむしろ気の毒な立場であり、まず責任を問われるべきは、政治家の評価を受けるためなら不公正な払下げや文書改ざんも平気で行う官僚の遵法意識の低さだ。

そして首相・政府の責任はこの様な問題を改めることだが、官僚の体質改善は恐らく無理だろう。

森友問題や福田元事務次官のセクハラ問題、自衛隊の日記紛失問題などを見るに、官僚組織には詳細な内部管理規定や危機対応マニュアル、コンプライアンスマニュアルといった、一般企業であれば既に普通に備えている制度が全く整備されていない印象を受ける。

例えば事務次官は「事務次官にセクハラされたら、どこに訴え出れば良いか」などといった自身にとって都合の悪いことを、自ら制度化しようとはしないのであろう。しかし今やこの様な問題が発生した場合、一定の規則や基準がなければ的確な対処も外部への説明も出来ず、組織が致命傷を受けることになるのは一般常識だ。今回の一連の問題の結果を見てもそれは明白だろう。

しかし官僚は自らを縛る様な制度は導入しようとせず、政府与党は官僚の言いなりで、野党はスキャンダルを政治問題化しようとするだけで本質的問題解決には興味は無く、いつまで経っても進歩が見られない。そしてまたきっと同じことが繰り返されるだけなのだろう。

 

【この問題に対し今後望みたいこと】

以上森友問題の真相については全て推論でしかなく、私は政治の素人なので全く間違った見立てをしている可能性もあるが、ロジカルに思考していくと、これ以外の結論になる可能性は極めて少ないのではないかと考えている。

あと残る疑問は佐川氏の単独犯か複数犯かということくらいだが、これは検察の捜査によるべきもので、これ以上国会で無駄な時間を使うべきものではないと思う。

また最後に一点付け加えておきたいが、プロフェッショナルであるマスコミや政治評論家で、この問題に対してなるほどと思うようなロジカルな分析や、問題の本質を指摘している人を殆ど見ない。

国民の知る権利を保証し、正しい世論を形成する為にはマスコミのレベルアップは極めて重要なことをもっと良く認識して欲しいし、野党は大して意味のないことを殊更強調し政治的に利用しようとしたり、国会で無駄な時間と税金を費やすことは慎んで欲しいと思うのだ。